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2016
07
08 -
男性も貧困にあえいでいる
貧困にあえぐのは女性だけではない
近年話題になって久しい「貧困女子」というカテゴリ。デリヘル経営コンシェルジュでも「もしかしたら風俗嬢の中にはこういった女性がいるのかもしれない。少しでもそんな女性が在籍しているお店のオーナー様の力になりたい。」という気持ちから毎週貧困女子の記事をアップさせていただいております。
しかし、近年貧困にあえいでいるのは必ずしも“女性”だけではないようです。今回は、時給910円で働く39歳の貧困男性“タカシさん”にスポット当てたお話をしていきたいと考えております。
どんどん貧困になる「負のスパイラル」にはまる男性
東京都内にあるそば店の厨房で働くタカシさん(39歳、仮名)の職場は東京・港区にある高級そば店で働いている。
豪華な生け花が置かれ、ブルースが流れる店内には、カウンターとテーブル席。来店客もおしゃれな服装の女性連れやカップルでにぎわっていて、芸能人もよく見かけるという。
天せいろが2000円近くして、日本酒はもちろん、ワインや洋酒も豊富。店員は髪を栗色に染めたり、あごひげをたくわえたりと、見栄えのよい若者がそろっている。しかしタカシさんははこう言って皮肉る。「お客さんはみんなアベノミクスの恩恵を受けている人。カウンターの内側と外側では、人間の住む世界が違います」
というのも、アルバイトの時給は「1090円」と聞いていたのに、働き始めてから時給に当たるのは「基本給910円(東京都の最低賃金は907円)」で、残りの180円は「職能業務手当」という手当らしい。
さらに有給休暇や社会保険、雇用保険もない。まさに求人詐欺と言われても仕方のない手法である。
有休も社会保険も法律で決められた制度だ。「ない」などという答えはありえない。
有給もなく時給も安いのにもかかわらず、求められるのは激務だ。
「休まないのが美徳」といった体育会系の空気があり、14日間連続勤務を求められたり、体調が悪いと言っても早退させてもらえなかったりしたこともある。
一方、客足が少ない日は、シフトで決められた勤務の途中でも突然、「帰って」と言われ、退勤後の時給は払われない。
会社側は契約書に「勤務時間は1日の所定を6時間、1週の所定を12時間」と書いているから、これを超えさえすれば問題ないと言うが、これでは生活が成り立たない。
こうした待遇に意見すると、じわじわと勤務時間を減らされ退職を迫られる「経済制裁」が下される。
タカシさんの勤務は現在、週4日、1日10~11時間ほどで落ち着いているが、ほとんどが空欄の真っ白な勤務表を渡されて辞めていったバイトは何人もいる。
店舗が住宅街の中にあり、換気扇による騒音を抑えなければならないため、換気が十分にできない。そのため従業員は環境に耐えきれず体調を崩しがちだ。
しかも終日、立ちっぱなしで、重い寸胴を運ぶなど重労働だが、それでもタカシさんの月収は20万円を切り、退職金もボーナスもない。
もともとは正社員だった、というタカシさんは自らの職歴を「斜陽産業ばかり選んできたような気がします」と振り返る。
就職氷河期のさなか、東京農大を卒業、外資系の消費者金融に就職した。最初はローンの切り替えを勧める部署で順調に成績を上げたが、ほどなくして借金の取り立てを担当する部署に異動。法律すれすれの社内マニュアルにのっとって債務者を精神的に追い詰めることが仕事になった。
自殺をするお客様にも何度も対面してきたことから人とかかわる仕事に嫌気が差し退職。
退職金をつぎ込み、専門学校で専門技術を習得したのちは派遣社員として大手電機メーカーで働いた。このときは月収30万円ほどで人間関係も良好だったが、2008年のリーマンショックのせいで派遣切りに遭った。
その次の派遣先は大手家電メーカーの関連会社。歩合制で月収は20万円にダウンした。ひどかったのは派遣先の正社員による派遣いじめだったという。そのような中たどり着いたのが現在のそば屋というわけだ。
正社員時代は他人の人生を破壊するような仕事を強いられ、手に職を付けて飛び込んだ派遣労働では雇い止めや正社員からのパワハラを目の当たりにした。給与も待遇も右肩下がり。そして、今、自分が抜け出せない非正規スパイラルの中にいると感じる。
タカシさんはことあるごとに声を上げてきた。派遣先社長に直訴もしたし、派遣時代に休業手当が出なかったときは管轄の労働基準監督署に相談もした。
現在は個人でも加入できる労働組合「首都圏青年ユニオン」に駆け込み、会社側と話し合いを進めている。
ユニオンの申し入れにより、現在は、不十分ながら有休取得も、社会保険などの加入も可能になった。
一方、時給を1090円とするか、910円とするかをめぐっては、両者の主張は平行線のまま。タカシさんは時給1090円を基に算出した割増賃金分を未払い残業代として請求しているが、会社側は拒否しているという。
筆者が不思議なのは、ほかのアルバイトたちが、誰ひとりタカシさんに続こうとしないことだ。
タカシさんと同世代でもある、同ユニオン事務局長の山田真吾さんは“有休も残業代も会社にお願いしてもらうもの”といった考えや、“会社に働かせてもらっている”という感覚の人が多いことが原因ではないかと推察している
そもそも、労働者と使用者である会社や企業は対等な関係ではない。
カツカツの生活の中、タカシさんが唯一、自分に許している「ぜいたく」が本を買って読むことだという。
「子どものために使うお金は1銭も惜しみたくない」というタカシさん。代わりに彼が「節約」しているのが医療機関の受診である。先日、肺炎で病院に行ったときは、医師から「どうしてもっと早く来なかったのか」としかられるほど重症化していた。また、詰め物が取れてしまった奥歯もずいぶん長く放置したままだ。
二極化が進むと風俗も“二極化”する
今回は貧困にあえぐ男性に焦点をあててお話してまいりました。ここまで極端な例は絶対数で考えれば少ないかもしれません。
しかし、タカシさんが冒頭部分で言っている通り「アベノミクスによって富める者はさらに富み、そうではない人たちが“貧困化”していく」という構図は着実に進んでいるのではないでしょうか。
日本を支配していた「一億総中流社会」が終焉を迎えようとしていることは変えられないでしょう。
中流階級がいなくなるということは「普通」の人がいなくなるということですが、風俗業界でもこの世の中の流れを受けて「格安」と「高級」といった二極化が進んでいます。
つまり、「普通の価格でやっているの普通の女の子がいるデリヘル」はお客様がいなくなってしまうので採算が取れなくなってきているのです。
これから開業したい、あるいは普通のデリヘルを開業したけど最近なんだか鳴りが悪いな……そんなオーナー様は、もしかするとここを考えるのが近道なのかもしれません。
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