2016

07
01

タックスヘイブンが日本の格差社会を助長する

超富裕層

富める者はもっと富める世界

一握りの富裕層が世の中の富の大半を握り、その他大勢は貧困化してゆく、そんな格差社会が本格的に到来している日本。
その理由は少なからず「富裕層がタックスヘイブンを使って税金逃れをしている」ということも要因でしょう。このタックスヘイブンの取り締まりが後手に回っている理由や実態を今回は解説していきたいと考えています。

日本の富裕層の比率と、海外に資産を持っている人の数が合わない?

先日、テレビ各局や新聞各紙で、国税局査察部の事績が報じられました。
それによると、2015年度、全国で摘発された脱税件数は181件・総額はおよそ138億円と、41年ぶりに140億円を下回ったようですが、彼らが刑事告発した115件のうち、海外の口座や取引先を悪用した事件は28件にのぼり、過去5年間で最多でした。

しかしこの海外を経由した脱税も氷山の一角でしょう。
というのも、日本では、海外資産を5000万円以上持っている人には申告義務がありますが、この申告をしている人は、現在8,000人。日本にはミリオネア(100万ドル以上の資産保有者)が100万人以上いるとされていることから考えると、どう見ても少なすぎます。
つまり、資産を内密に海外に持ち出し、タックスヘイブンなどで保管している人が申請者の数倍から数十倍はいるのではないかということです。
最近よく出てくる「パナマ文書」というのはタックスヘイブンを利用していた世界中の富裕層、要人たちのリストが書かれた文書のこと。何者かによって、南ドイツ新聞に持ち込まれ、白日の目にさらされました。

  • ●ロシアのプーチン大統領
  • ●イギリスのキャメロン首相
  • ●中国の習近平国家主席
  • ●ジャッキー・チェン


といった人たちがリストには載ってましたが、そもそもこのタックスヘイブンとは何でしょう。

そもそもタックスヘイブンって何?

 

ところでそもそもタックスヘイブンというのは何なのでしょう。タックスヘイブンとは税金が極端に安い国、地域のことです。ケイマン諸島、パナマ、南太平洋諸島の国々や、広義では香港、シンガポールなども含まれます。
そしてタックスヘイブンは、税金が安いだけではなく、金融情報を漏らしてはならない、という「銀行秘密法」を持っており、銀行口座や法人に関する情報を秘密にできる場合が多いのです。
さらに、タックスヘイブンは、「名義貸し」も行っています。つまり形式的にタックスヘイブンに本籍を置き、税金だけ安く済ませることができるのです。
「税金が安くて、情報は漏れないし、本籍も置ける!」富裕層や大企業がこんなに“美味しい話”を見過ごすわけがないのです。

なぜタックスヘイブンと呼ばれる地域はここまで富裕層を優遇するのでしょう。それはタックスヘイブン側は籍だけ移す手数料だけで相当な収入になるからです。

富裕層がタックスヘイブンを使うとどうなるか

 

大企業や富裕層がタックスヘイブンを利用し、本国での税金を逃れることは先進国の財政を大きく圧迫します。特にアメリカでは法人税収10兆円以上を取り損ねているという試算もあります。
そのため先進諸国では、お互い協力してタックスヘイブン対策を行うよう、話が進められていました。そんな矢先に出てきたのが、パナマ文書なのです。

もちろん日本政府も、タックスヘイブンの「被害」をこうむっています。ケイマン諸島だけで、60兆円以上の日本の金が入り込んでいるのです。

日本の国税庁も、「タックスヘイブンに本籍がある企業や人でも、日本で活動しているのであれば、日本で税金を納めましょう」というタックスヘイブン対策の法律が施行しています。
ですがタックスヘイブン側は「タックスヘイブン対策への対策」が講じられつつあり、いたちごっこの状態になっていて、後手に回っているともいえるでしょう。海外取引専門の国税職員を養成する仕組みも作られつつありますが、彼らの英語力に欠陥があることも大きな要因です。

このままでは、日本の税収は富裕層ではなく中流階級以下に頼らざるを得なくなるかもしれません。実際、昨今の日本では、富裕層、大企業の税金は大幅に下げられる一方で、消費税の増税など、庶民をターゲットにした増税が続いています。
このまま「富裕層が握る社会」は進行していくのでしょうか。

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